山本周五郎の文庫本紹介
   山本周五郎の本はどれを読んでも感動します。今回3度か4度目に「さぶ」を読んでやはり
感動しました。最初に読んでから40年程に
なりますが、全く色褪せません。素敵な物語
だと改めて思いました。他にも「ながい坂」
「柳橋物語」「樅の木は残った」などの長編や
沢山の短編集があります。戦国や江戸時代を
題材にした小説を多く著作しています。

山本周五郎(1903-1967) プロフィール
 
No. 表紙 収録作品 総頁数 あらすじ
1-1
樅ノ木は残った(上)
  樅ノ木は残った
491
  仙台藩主・伊達綱宗は幕府から逼塞を命じられた。放蕩に身を持ち崩したからだという。明くる夜、藩士四名が「上意討」の名の下に次々と斬殺される。疑心暗鬼に陥り混乱を来す藩政に乗じて権勢を増す、仙台藩主一族・伊達兵部と幕府老中・酒井雅楽頭。その謀略を見抜いた宿老の原田甲斐はただひとり、藩を守る決意をする。仙台藩六十二万石を寸断……。酒井雅楽頭と伊達兵部とで交された密約が明らかになった。嫡子を藩主の座に据えることに血眼になる兵部だが、藩の取潰しを目論む幕府にとってはその駒に過ぎない。
            <新潮社ホームページより>
1-2
樅ノ木は残った(下)
  樅ノ木は残った
555
  罠に気付いた原田甲斐はあえて兵部に取り入り、内部から非謀を破却。風前の灯となった伊達家の安泰のため、ひたすら忍従を装う。切腹、闇討ち、毒殺。親しき友が血を流す様を「主家大切」一義のため原田甲斐はひたすら堪え忍ぶ。藩内の権力をほしいままにする伊達兵部は他の一門と激しく対立し、ついに上訴へと発展する。評定の場で最後の賭けに出る甲斐。すべては仙台藩安堵のために……。雄大な構想と斬新な歴史観の下に、原田甲斐の肖像を刻んだ歴史長編。
            <新潮社ホームページより>
2
柳橋物語・むかしも今も
  柳橋物語
むかしも今も
288
  幼い恋心で男との約束を交わしたおせんは、過酷な運命に翻弄される。おせんを愛する幸太は、命をかけて彼女を守り抜く(『柳橋物語』)。周囲の愛情に包まれ何不足なく育ったまきに降りかかった夫の裏切り。密かに慕う直吉は愚直なまでにまきに尽くすが(『むかしも今も』)。一途な愛の行方を描く、下町人情溢れる感動の傑作二編。       <新潮社ホームページより>
3
五辯の椿
  五辯の椿
267
  婿養子の父親は懸命に働き、店の身代を大きくした。淫蕩な母親は陰で不貞を繰り返した。労咳に侵された父親の最期の日々、娘の懸命の願いも聞かず母親は若い役者と遊び惚けた。父親が死んだ夜、母親は娘に出生の秘密を明かす。そして、娘は羅刹と化した……。倒叙型のミステリー仕立てで描く法と人倫の境界をとらえた傑作。
            <新潮社ホームページより>
4
赤ひげ診療譚
  狂女の話
駈込み訴え
むじな長屋
三度目の正直
徒労に賭ける
鶯ばか
おくめ殺し
氷の下の芽
311
  幕府の御番医という栄達の道を歩むべく長崎遊学から戻った保本登は、小石川養生所の〝赤ひげ〟とよばれる医長新出去定に呼び出され、医員見習い勤務を命ぜられる貧しく蒙昧な最下層の男女の中に埋もれる現実への幻滅から、登は尽く赤ひげに反抗するが、その一見乱暴な言動の底に脈打つ強靭な精神に次第に惹かれてゆく。傷ついた若き医生と師との魂のふれあいを描く快作。
               <文庫本カバーより>
5
大炊介始末
  ひやめし物語
山椿
おたふく
よじょう
大炊介始末
こんち午の日
なんの花か薫る

ちゃん
落葉の隣り
414
  自分の出生の秘密を知った大炊介が、狂態を装って藩の衆望を故意にうらぎらねばならなかった悲劇を描く表題作。自分たちはおたふくであるときめこんでしまっている底抜けに明るく情味豊かな姉妹の物語「おたふく」。奇抜な視点と卓抜な文体で「剣聖」宮本武蔵を描き、著者の後半期の出発点となった意義深い作品「よじょう」など。さまざまな傾向の短編から代表作10編を選りすぐった。        <新潮社ホームページより>
6
小説日本婦道記
 
松の花
箭竹
梅咲きぬ
不断草
薮の蔭
糸車
  風鈴
尾花川
桃の井戸
墨丸
二十三年
 
241
  千石どりの武家としての体面を保つために自分は極端につましい生活を送っていたやす女。彼女の死によって初めて明らかになるその生活を描いた『松の花』をはじめ『梅咲きぬ』『尾花川』など11編を収める連作短編集厳しい武家の定めの中で、夫のため、子のために生き抜いた日本の妻や母の、清々しいまでの強靭さと、凛然たる美しさ、哀しさがあふれる感動的な作品である。
               <文庫本カバーより>
7
大炊介始末
  城中の霜
水戸梅譜
嘘ァつかねえ
日日平安
しじみ河岸
ほたる放生
  末っ子
橋の下
屏風はたたまれた
若き日の摂津守
失蝶記
 
394
  切腹のマネをして一飯を乞うほどに落ちぶれた浪人が、藩の騒動にまきこまれ、それを手際よく片づけるまでをユーモラスに描いた『日日平安』。安政大獄によって死罪を命じられた橋本左内が死に直面して号泣するという“意外な”態度のなかに、武士道をこえた真実の人間像をさぐった『城中の霜』。ほかに『水戸梅譜』『しじみ河岸』『ほたる放生』など、ヒューマニズムあふれる名作全十一編。       <新潮社ホームページより>
8
さぶ
  さぶ
369
  小雨が霧のようにけぶる夕方、両国橋をさぶが泣きながら渡っていた。その後を追い、いたわり慰める栄二……江戸下町の経師屋芳古堂に住みこむ同い年の職人、男前で器用な栄二と愚鈍だが誠実なさぶの、辛さを噛みしめ心を分ちあって生きる純粋でひたむきな愛と行動。やがておとずれる無実の罪という試練に立ち向う中で生れたひと筋の真実と友情を通じて、青年の精神史を描く。
               <文庫本カバーより>
9-1
虚空遍歴(上)
  虚空遍歴
328
  旗本の次男、中藤冲也が余技として作る端唄は、独得のふしまわしで江戸市中のみならず遠国でももてはやされた。しかし冲也はそれに満足せず、人を真に感動させる本格的な浄瑠璃を作りたいと願い、端唄と縁を切り、侍の身分をも棄てて芸人の世界に生きようとする。冲也の第一作は中村座で好評を博するが、すぐに行き詰り、妻も友をも信じられぬ懐疑の中にとじこめられてしまう。
            <新潮社ホームページより>
9-2
虚空遍歴(下)
  虚空遍歴
352
  江戸で行き詰った冲也は、浄瑠璃の本場、大阪で一本立ちしようと決意し江戸をあとにするが、上方でも無惨な失敗に終り、次第に深酒にひたるようになる。冲也はさらに北陸の金沢へと遍歴を続けるのだが……。おのれの人生を芸道との孤独な苦闘に賭けて悔いることのなかった男を通し、「人間の真価はなにを為したかではなく、何を為そうとしたかだ」という著者の人間観を呈示した長編。         <新潮社ホームページより>
10
季節のない街
  季節のない街
  街へゆ電車
僕のワイフ
半助と猫
親おもい
牧歌調
プールのある家
箱入り女房
枯れた木
  ビスマルクいわく
とうちゃん
がんもどき
ちょろ
肇くんと光子
倹約について
たんばさん
 
327
  他人には見えない電車を毎日運行する六ちゃん。夫を交換し合って暮らす勝子と良江。血の繋がらない子供を五人も養う沢上良太郎に、自宅に忍び込んだ泥棒をかばうたんば老人……。誰もがその日の暮らしに追われる貧しい街で、弱さや狡さを隠せずに生きる個性豊かな住人たちの悲喜を紡いだ「人生派・山本周五郎」の不朽の名作
            <新潮社ホームページより>
11
おさん
 
青竹
夕靄の中
みずぐるま
葦は見ていた
夜の辛夷
  並木河岸
その木戸を通って
おさん
偸盗
饒舌り過ぎる
394
  純真な心を持ちながら男から男へわたらずにはいられないおさん……可愛いおんなであるがゆえの宿命の哀しさを描く表題作など10編。
               <文庫本カバーより>
12
おごそかな渇き
 
蕭々十三年
紅梅月毛
野分
雨あがる
かあちゃん
  将監さまの細みち
鶴は帰りぬ
あだこ
もののけ
おごそかな渇き
407
  長年対面しつづけた宗教的課題を取り上げ、〝現代の聖書〟として世に問うべく構想を練りながらも絶筆となった現代小説「おごそかな渇き」。ほかに〝下町もの〟の傑作「かあちゃん」「将監さまの細みち」「鶴は帰りぬ」〝武家もの〟の名品「紅梅月毛」「野分」「蕭々十三年」〝こっけいもの〟の「雨あがる」、メルヘン調の「あだこ」「もののけ」と、周五郎文学のさまざまな魅力を一冊に収めた。   <新潮社ホームページより>
13
正雪記
  第一部
第二部
第三部
675
  立身出世を夢見て、一介の染屋職人の伜から、侍になる野望を抱き江戸へ出奔した由井正雪は、その明晰な頭脳を武器に島原の乱で浪人たちの衆望を集める。浪人隊を結成し、幕府軍の先鋒に使うことを進言する。しかし知恵伊豆・老中松平信綱の狡猾な罠が待っていた……。島原の乱以後、徳川の天下は益々揺ぎないものになっていった。間一髪、奸計から逃れた正雪は、諸国放浪の末江戸に戻り兵学塾を開く。そんな折、浪人が田畑を巡り騒動を起こした。幕府の浪人統制が厳しくなる中、正雪は対応改善の進言を胸に秘め、因縁の紀伊家へと向かうしかし、またしても老中信綱の策謀が……。周五郎が新たな歴史解釈に挑んだ傑作歴史長編、堂々完結。
            <新潮社ホームページより>
14-1
ながい坂(上)
  ながい坂
426
  徒士組の子に生まれた阿部小三郎は、幼少期に身分の差ゆえに受けた屈辱に深い憤りを覚え、人間として目覚める。その口惜しさをバネに文武に励み成長した小三郎は名を三浦主水正と改め、藩中でも異例の抜擢を受ける。藩主・飛騨守昌治が計画した大堰堤工事の責任者として主水正は様々な妨害にも屈せず完成を目指し邁進する。
            <新潮社ホームページより>
14-2
ながい坂(下)
  ながい坂
428
  突然の堰堤工事の中止。城代家老の交代。三浦主水正の命を狙う刺客。その背後には藩主継承をめぐる陰謀が蠢いていた。だが主水正は艱難に耐え藩政改革を進める。身分で人が差別される不条理を二度と起こさぬために。重い荷を背負い長い坂を上り続ける、それが人生。一人の男の孤独で厳しい半生を描く周五郎文学の到達点。 
            <新潮社ホームページより>
15
つゆのひぬま
 
武家草鞋
おしゃべり物語
山女魚
陽気な客
妹の縁談
  大納言狐
水たたき
凍てのあと
つゆのひぬま
 
383
  深川の小さな娼家に働く女〝おぶん〟の欺かれることを恐れぬ一途なまごころに、年上の〝おひろ〟の虐げられてきたがゆえの不信の心が打負かされる姿を感動的に描いた人間讃歌『つゆのひぬま』など江戸時代を舞台にした作品7編に、平安朝に取材し現代への痛烈な批判をこめた『大納言狐』と、現代ものの傑作『陽気な客』を加え、山本周五郎のさまざまな魅力を一冊に収めた短編集
               <文庫本カバーより>
16
ひとごろし
 
暴風雨の中
雪と泥

女は同じ物語
しゅるしゅる
  裏の木戸はあいている
地蔵
改訂御定法
ひとごろし
398
  藩中きっての臆病者と評判をたてられた若侍が、それを逆用し奇想天外な方法で誰も引受け手のなかった上意討ちを果すまでを描いた『ひとごろし』、無償の奉仕、という晩年最大の命題をテーマに著者の人間肯定がみごとに定着した『裏の木戸はあいている』をはじめ、戦前の作品から最晩年の表題作まで、〝武家もの〟〝岡場所もの〟〝こっけいもの〟等々の代表的短編10編を収める
               <文庫本カバーより>
17
栄花物語
  栄花物語
508
  徳川中期、時の先覚者として政治改革を理想に、非難と悪罵の怒号のなか、頑なまでに己れの意志を貫き通す老中田沼意次……従来、賄賂政治の代名詞のような存在であった田沼親子は、商業資本の擡頭を見通した進取の政治家であったという、新しい視点から、絶望の淵にあって、孤独に耐え、改革を押し進めんとする不屈の人間像を、時流に翻弄される男女の諸相を通して描く歴史長編
               <文庫本カバーより>
18
天地静大
  天地静大
666
  倒幕に揺れ動く幕末、雄藩に挟まれ、時代の大波をあびて苦悩する東北の一小藩の青年群像を描く。不安と恐れから盲目的に激する若者たちの中で、超然として学問の道に専念する杉浦透とその仲間たち。自己に忠実に生きんがために自刃の道を選ぶ藩主の弟、水谷郷臣。動乱の時代を背景に、人間の弱さ、政治と庶民、思想と行動などを織りなした周五郎文学稀有の幕末ものの長編である
               <文庫本カバーより>
19
松風の門
 
松風の門
鼓くらべ

評釈堪忍記
失恋第五番
湯治
ぼろと釵
  砦山の十七日
夜の蝶
釣忍
月夜の眺め

醜聞
 
403
  幼い頃、剣術の仕合で誤って幼君の右眼を失明させてしまった俊英な家臣がたどる、峻烈な生き様を見事に描いた〝武道もの〟の典型『松風の門』、しがない行商暮しではあるけれども、心底から愛する女房のために、富裕な実家への帰参を拒絶する男の心意気をしみじみと描く〝下町もの〟の傑作『釣忍』、ほかに『鼓くらべ』『ぼろと叡』『砦山の十七日』『醜聞』など全13編を収録する。             <文庫本カバーより>
20
深川安楽亭
 
内藏允留守
蜜柑
おかよ
水の下の石
上野介正信
真説吝嗇記
  百足ちがい
四人囃し
深川安楽亭
あすなろう
十八条乙
枡落し
403
  抜け荷(密貿易)の拠点、深川安楽亭にたむろする命知らずの無頼な若者たちが、恋人の身請金を盗み出して袋叩きにされたお店者に示す命がけの無償の善意を、不気味な雰囲気をたたえた文章のうちに描いた表題作。完成されたものとしては著者最後の作品となった『枡落し』。ほかに『内蔵九留守』『おかよ』『水の下の石』『百足ちがい』『あすなろう』『十八条乙』など全12編を収録する。         <文庫本カバーより>
21
ちいさこべ
  花筵
ちいさこべ
ちくしょう谷
へちまの木
369
  江戸の大火ですべてを失いながら、みなしご達の面倒まで引き受けて再建に奮闘してゆく大工の若棟梁の心意気がさわやかな感動を呼ぶ表題作、藩政改革に奔走する夫のために藩からの弾圧を受けつつも、真実の人間性に目を見ひらいてゆく健気な女の生き方を描く『花筵』、人間はどこまで人間を有しうるかの限界に真正面から挑んだ野心作『ちくしょう谷』など、中編の傑作4編を収する。             <文庫本カバーより>
22
山彦乙女
  山彦乙女
248
  武田家再興……百三十余年にわたる悲願に翻弄される甲州甘利郷のみどう一族。江戸の新御番、安倍半之助は甲府勤番中に失踪した叔父の遺品を調べるうち、叔父を狂気へと導いた武田家の莫大な遺産をめぐる「かんば沢」の妖しい謎のとりことなり、己れもまた甲州へと出奔してゆく。著者の郷里甲州の雄大な自然を舞台に謳いあげた、周五郎文学に特異な位置を占める怪奇幻想の大ロマン。             <文庫本カバーより>
23
あとのない仮名
  討九郎馳走
義経の女
主計は忙しい
桑の木物語
竹柏記
妻の中の女
しづやしづ
あとのない仮名
400
  江戸で五指に入る植木職でありながら、妻とのささいな感情の行き違いがもとで、職を捨て、妻子も捨てて遊蕩にふける男の寒々とした内面を虚無的な筆致で描いて周五郎文学に特異な位置を占める最晩年の傑作『あとのない仮名』、夫婦の変らぬ愛情を、枯死するまで色を変えない竹柏に託した武家ものの好編『竹柏記』ほか、『主計は忙しい』『桑の木物語』『しづやしづ』など、全八編を収める。         <文庫本カバーより>
24
四日のあやめ
  ゆだん大敵
契りきぬ
はたし状
貧窮問答
初夜
四日のあやめ
古今集巻之五

榎物語
399
  武家の法度である喧嘩の助太刀のたのみを、夫にとりつがなかった妻の行為をめぐって、夫婦の絆とは何かを問いかける『四日のあやめ』。娼婦仲間との戯れに始まった恋であるが故に、一子をなしながらも、男のもとから立去ろうとする女を描いて周五郎文学ならではの余韻を残す『契りきぬ』。ほかに『ゆだん大敵』『貧窮問答』『初夜』『古今集巻之五』『燕』『榎物語』など珠玉作全9編を収める。       <文庫本カバーより>
25
町奉行日記
 
土佐の国柱
晩秋
金五十両
落ち梅記
寒橋
  わたくしです物語
修業綺譚
法師川八景
町奉行日記
霜柱
396
  着任から解任まで一度も奉行所に出仕せずに、奇抜な方法で藩の汚職政治を摘発してゆく町奉行の活躍ぶりを描いた痛快作『町奉行日記』。藩中での失敗事をなんでも〈わたくし〉のせいにして、自己の人間的成長をはかる『わたくしです物語』。娘婿の過誤をわが身に負ってあの世に逝く父親の愛情を捉えた短編小説の絶品『寒橋』ほかに『金五十両』『落ち梅記』『法師川八景』など10編収録。           <文庫本カバーより>
26
一人ならじ
 
三十二刻
殉死
夏草戦記
さるすべり
薯粥
石ころ
  兵法者
一人ならじ
楯輿
柘榴
青嵐
おばな沢
茶摘は八十八夜から始まる
花の位置
367
  合戦の最中、敵が壊そうとする橋を支える丸太がわりに自分の足を使い、片足を失う『一人ならじ』。敵の部将を倒しても首級を掻き取ることをせず、すばやく次の敵を求めて前進する『石ころ』。ほかに『三十二刻』『殉死』『さるすべり』など、名を求めず、立身栄達も望まず、黙々としておのれの信ずる道を生きる無名の武士たちとその妻の心ばえを描いた〝武家〟もの、の傑作全14編を収める。        <文庫本カバーより>
27
人情裏長屋
 
おもかげ抄
三年目
風流化物屋敷
人情裏長屋
泥棒と若殿
長屋天一坊
  ゆうれい貸屋
雪の上の霜
秋の駕籠

麦藁帽子
 
376
  居酒屋でいつも黙って一升枡で飲んでいる浪人、松村信兵衛の胸のすく活躍と人情味あふれる子育ての物語『人情裏長屋』。天一坊事件に影響されて家系図狂いになった大家に、出自を尋ねられて閉口した店子たちが一計を案ずる滑稽譚『長屋天一坊』ほかに『おもかげ抄』『風流化物屋敷』『泥棒と若殿』『ゆうれい貸屋』など周五郎文学の独擅場ともいうべき〝長屋もの〟を中心に11編を収録。          <文庫本カバーより>
28
花杖記
 
武道無門
良人の鎧
御馬印拝借
小指
備前名弓伝
  似而非物語
逃亡記
肌匂う
花杖記
須磨寺附近
367
  何者かによって父を殿中で殺され、家禄削減を申し渡された加乗与四郎が、事件の真相をあばくまでの記録『花杖記』。どんな場合も二の矢を用意せず、また果し合いにもあえて弱い弓を持ってのぞむ弓の達人の物語『備前名弓伝』。ほかに『武道無門』『御馬印拝借』『小指』『似而非えせ物語』など、武家社会の掟の中で生きる武士たちの姿に、永遠に変らぬ人間の真実をさぐった作品10編を収録。           <文庫本カバーより>
29
扇野
 
夫婦の朝
合歓木の蔭
おれの女房
めおと蝶
つばくろ
扇野
三十ふり袖
滝口
超過勤務
401
  枯野の襖絵に点睛を加えるために、初めて会った芸妓に野原で扇を落させる流れ絵師。その後の二人の道行きとその陰で力をつくす女のまごころを鮮やかに写し取った『扇野』。〝三十ふり袖、四十島田〟のたとえに流れる女の哀しみを、下町の人情と善意で救った『三十ふり袖』。なにげない会話や独白のなかに女の機微と人生の深い意味を伝える〝愛情もの〟の秀作全九編を収録する。             <文庫本カバーより>
30
寝ぼけ署長
  中央銀行三十万円紛失事件
海南氏恐喝事件
一粒の真珠  毛骨屋親分
新生座事件  十目十指
眼の中の砂  我が歌終る
夜毎十二時  最後の挨拶
317
  五年の在任中、署でも官舎でもぐうぐう寝てばかり。ところが、いよいよ他県へ転任が決ると、別れを悲しんで留任を求める声が市民たちからわき起った……。罪を憎んで人を憎まずを信条とする〝寝ぼけ署長〟こと五道三省が、「中央銀行三十万円紛失事件」や「海南氏恐喝事件」など十件の難事件を、痛快奇抜で人情味あふれる方法でつぎつぎと解決する。山本周五郎唯一の探偵小説である。            <文庫本カバーより>
31
あんちゃん
 
いさましい話
菊千代抄
思い違い物語
七日七夜
凌霄花
あんちゃん
ひとでなし
薮落し
379
  妹に対して道ならぬ行為をはたらき、それを悔いてグレていった兄の心の軌跡と、思いがけぬ結末を描く『あんちゃん』。世継ぎのいない武家の習いとして、女であるにもかかわらず男だと偽って育てられた者の悲劇を追った『菊千代抄』。ほかに『思い違い物語』『七日七夜』『ひとでなし」など、人間をつき動かす最も奥深い心理と生理に分け入り、人間関係の不思議さを凝視した秀作八編を収録。         <文庫本カバーより>
32
彦左衛門外記
  彦左衛門外記
272
  身分のちがいを理由に大名の姫から絶縁された旗本、五橋数馬は奇抜な方法で出世を試みる。失意のうちに市井に隠棲していた大伯父の大久保彦左衛門をおだてあげ、戦記を捏造し、なき家康のお墨付きを偽造して天下の御意見番にしたてあげてしまう。それを侍侠客、水野十郎左衛門たちが担ぎあげたために、大騒動がもちあがる。諷刺と虚構を存分に駆使した奇想天外、抱腹絶倒の異色作。             <文庫本カバーより>
33
やぶからし
 
入婿十万両
抜打ち獅子兵衛
蕗問答
笠折半九郎
避けぬ三左
鉢の木
  孫七ととずんど
菊屋敷
山だち問答
「こいそ」と「竹四郎」
やぶからし
ばちあたり
278
  生れついての放蕩がやまずに勘当され、〝やぶからし〟と自嘲するような前夫のもとに、幸せな家庭や子供を捨ててはしる女心のひだの裏側を抉った表題作。美しい妹の身勝手さに運命を変えられた姉が、ほんとうの幸福をさがし求めるまでを抑制された筆でたどった『菊屋敷』ほかに、『避けぬ三左』『孫七とずんど』『山だち問答』『「こいそ」と「竹四郎」』『ばちあたり』など、全12編を収める。      <文庫本カバーより>
34
花も刀も
 
落武者日記
若殿女難記
古い樫木
花も刀も
枕を三度たたいた
源蔵ヶ原
溜息の部屋
正体
390
  没落した家運を剣によって再興しようと淵辺道場に入門した平手幹太郎(造酒)は、稽古おさめの試合で筆頭代師範を破るが、その夜、破門を命じられる。強い自負心と出世への野望を秘め、酒も飲まず女遊びもせずに剣ひと筋に励みながら、その努力が空回りし、ついには意味もなく人を斬るまでの失意の青春を描く『花も刀も』。ほかに『枕を三度たたいた』『源蔵ヶ原』など全8編を収める。           <文庫本カバーより>
35
雨の山吹
 
暗がりの乙松
喧嘩主従
彩虹
恋の伝七郎
山茶花帖
  半之助祝言
雨の山吹
いしが奢る
花咲かぬリラの話
四年間
353
  乳呑み児をかかえた家来と出奔した妹を斬るために遠国まで追っていった兄は、みじめな境遇におちながらも小さな幸福にすがって生きる妹一家と出会う。静かな結末の余韻が深い感動を呼ぶ表題作。逆境に生きてきた勝ち気の芸者と藩政改革の矢面に立つ若侍との障害をこえた愛『山茶花帖』。ほかに『恋の伝七郎』『いしが奢る』など、武家社会のさまざまな愛の形を中心に十編を収めを収める。          <文庫本カバーより>
36
月の松山
 
お美津簪
羅刹
松林蝙也
荒法師
初蕾
  壱両千両
追いついた夢
月の松山
おたは嫌いだ
失恋第六番
365
  あと百日の生命と宣告された武士が、これを醜く装うことで師の家の安泰と愛人の幸福をはかろうとする苦渋にみちた心情を描く『月の松山』。口論の果てに同僚を斬ってしまった男の子供を身ごもっていた女の、数奇な運命とそれを見まもる周囲の暖かな眼を情感ゆたかに謳った『初蕾』。ほかに『お美津簪』『追いついた夢』『おたは嫌いだ』など、話術の巧みさを存分に発揮した十編を収める。        <文庫本カバーより>
37
花匂う
 
宗太兄弟の悲劇
秋風不帰
矢押の樋
愚鈍物語
明暗嫁問答
椿説女嫌い
  花匂う

渡の求婚
出来ていた青
酒・盃・徳利
 
309
  幼なじみの多津が嫁ぐ相手には隠し子がいる。それを教えてあげようとして初めて、直弥は自分が多津をずっと愛していたのだと気づく。そうであるからには隠し子のことは告げるわけにはいかない。中傷になるから……。その後の二人のたどる歳月を通し、人生の深い味わいを
感動的に語りかけた『花匂う』。ほかに『矢押の樋』『愚鈍物語』『椿説女嫌い』『蘭』『渡の求婚』など全11編を収める。       <文庫本カバーより>
38
艶書
 
だだら団兵衛
槍術年代記
本所霙河岸
金作行状記
憎いあん畜生
城を守る者
  五月雨日記
宵闇の義賊
艶書
可笑記
花咲かぬリラ
 
326
  宵節句の宴で七重は隣家の出三郎の袂に艶書を入れる。しかし、部屋住みでうだつがあがらないと思っている出三郎には、それが誰からのものかわからないまま、七重は他家へ嫁してゆく。廻り道をしてしか実らぬ恋を描く『艶書』。愛する男を立ち直らせるために、自ら愛着を断つ女心のかなしさを語った『憎いあん畜生』。著者が娯楽小説として初めて世に問うた『だだら団兵衛』など全11編。          <文庫本カバーより>
39
菊月夜
 
其角と山賊と殿様

花宵
おもかげ
菊月夜
  一領一筋
蜆谷
忍術千一夜
留さんとその女
蛮人
300
  四年間の江戸詰めの間に許婚・小房の父が狂死し家族は追放されるという運命に遭った信三郎が、事件の決裁に疑問をいだいて真相をさぐり、小房と劇的に再会するまでを描いた『菊月夜』。周五郎が年少の読者に向けて、母の愛とは何かを感動的に語りかけた『花育』『おもかげ』。ほかに『柿』『一領一筋』『蜆谷』や、名作『青べか物語』の原型となった『留さんとその女』『蛮人』など全十編。         <文庫本カバーより>
40
艶書
 
無頼は討たず
朝顔草紙
違う平八郎
粗忽評判記
足軽奉公
義理なさけ
  梅雨の出来事
鍔鳴り平四郎
青べかを買う
秋風の記
お繁
うぐいす
310
  顔も見知らぬ許婚同士が、十数年の愛情をつらぬきとおし、藩の奸物を討って結ばれるまでを描いた『朝顔草紙』。徳川四天王、本多平八郎と同姓同名の臆病な青年武士が、戦場で名乗りをあげるたびに敵の第一目標とされ、あわてて逃げ出すという滑稽な設定の『違う平八郎』。いずれ劣らぬあわて者同士主従の不思議な心の通いあいを描いた『粗忽評判記』。ほかに『義理なさけ』など全12編。        <文庫本カバーより>
41
雨のみちのく・独居のたのしみ
  雨のみちのく
独居のたのしみ
その他随想多数
225
  庶民への愛に貫かれた小説一筋に精進をかさね、また頑固一徹な言行によって〝曲軒〟とあだ名された山本周五郎。その独得な人生観・文学観と、すべてを創作に打ち込む厳しい日常をうかがわせてくれる、文庫版初のエッセイ集。本編には、名作『樅ノ木は残った』の取材ノートともいえる「雨のみちのく」などの紀行文に、日常雑感、それに十八番中の十八番、歳末随想を集める。
               <文庫本カバーより>
42
火の杯
  火の杯
412
  日本最大の財閥、御池家の庶子、康彦は財閥解体からのがれるための生贄として、別人に仕立てられ公金拐帯の罪をきせられて、最後には生命までも奪われようとする出生の秘密にまつわるニヒルな性格から、苛酷な指令をただ受入れているだけの康彦であったが、かつて自分の愛した奥勤めの娘の献身的な愛によって運命に立ち向うようになる。山本周五郎が戦後の現実に挑んだ意欲作。
               <文庫本カバーより>
43
新潮記
  新潮記
289
  高松の松平家は水戸の徳川家と互いに養子を交換する本枝不離の関係にあったが、水戸藩が幕末動乱の策源地となるとともに藩内は尊皇佐幕に二分される。高松藩の尊皇派の中心人物の庶子である早水秀之進は、その生れのゆえに屈折し、文武に秀でているにもかかわらず時流を冷やかに眺めるだけであったが、水戸藩への密使に立ち生死の間をくぐりぬけることで己れのなすべき事を悟る
               <文庫本カバーより>
44
夜明けの辻
 
嫁取り二代記
遊行寺の浅
夜明けの辻
梅月夜
熊野灘
  平八郎聞書
御定法
勘弁記

 
318
  江戸中期の尊王論者、山県大弐と出会ったことから藩の内紛にまきこまれた二人の青年武士の、友情の破綻と和解までを描いた初期の中編「夜明けの辻」元芸妓との結婚を望んだ若侍が、頑固一徹の国家老の伯父を説得するために機略に富んだやり取りをくりひろげる〝こっけい物〟の佳品「嫁取り二代記」ほかに「平八郎聞書」「葦」など、山本周五郎の文学的精進のあとを伝える全11編。           <文庫本カバーより>
45
髪かざり
 
笄堀
忍緒

春三たび
障子
阿漕の浦

横笛
郷土
  雪しまく峠
髪かざり
菊の系図
壱岐ノ島
竹槍
蜜柑畑
二粒の飴
萱笠
 
305
  太平洋戦争中から終戦直後にかけて、著者は<日本婦道記>と題した短編を発表し続けた。初期の代表作となったこのシリーズには、未曾有の非常時にあって、古来、戦場の男たちを陰で支え続けてきた日本の妻や母たちの、夫も気づかないところに表われる美質を掘起こしたいとの願いが込められていた。本書には、『忍緒』や『二粒の飴』など、文庫未収録の本シリーズ作品のすべ17編を収録。        <文庫本カバーより>
46
生きている源八
  熊谷十郎左
西品寺鮪介
足軽槍一筋
藤次郎の恋
聞き違い
新女峡祝言
立春なみだ橋
豪傑ばやり
生きている源八
虎を怖るる武士
驢馬馴らし
     〔戯曲〕破られた画像
331
  どんな激戦に臨んでもいつも生きて還ってくるために、臆病者とさえ誤解されながら、なおも生きつづける兵庫源八郎。その細心にして豪胆な戦いぶりに託して、〝玉砕〟が叫ばれていた太平洋戦争末期に作者の信ずるところを強く打ち出した<日本士道記>シリーズの表題作。かけ違った恋に衝撃を受けつつも、剣の道を貫く「藤次郎の恋」。ほかに「立春なみだ橋」「豪傑ばやり」など全12編。          <文庫本カバーより>
47
人情武士道
  曽我平九郎
癇癪料二十四万石
竹槍念仏   竜と虎
風車     大将首
驕れる千鶴  人情武士道
武道用心記  猿耳
しぐれ傘   家常茶飯
359
  御用人の佐藤欽之助は、妻を通して琴の稽古友達だった女から、夫の仕官の世話を頼まれる。その女が、かつて縁談を申し込んで断られた和枝であることを知った鉄之助は、思いがけない行動で依頼を果たす……。著者の鋭い人間観察眼を際立たせている表題作の他に、後年の〝職人もの〟の先駆をなす「しぐれ傘」や〝滑稽もの〟の「竜と虎」など、初期の傑作12編を収める。
               <文庫本カバーより>
48
酔いどれ次郎八
  彦四郎実記
浪人一代男
牡丹花譜
酔いどれ次郎八
武道仮名暦
  与茂七の帰藩
あらくれ武道
江戸の土圭師
風格
人間紛失
 
333
  藩の名刀を奪い、役人を斬って薩摩藩に逃げ込んだ侍を上意討ちにする命をおびた矢作次郎八と岡田千久馬。二人は首尾よく本懐を遂げるが、薩摩藩士に取り囲まれ退路を断たれる。千久馬を逃がし、その場で死んだと思われていた次郎八が二年後に藩に姿を現した時、かつての許嫁いいなずけは千久馬のもとに嫁いでいた……。次郎八のとる意外な行動を描く表題作ほか、「与茂七の帰藩」など全十一編を収録。         <文庫本カバーより>
49
風雲海南記
  風雲海南記
581
  四国西条藩主の家系でありながら双子の弟に生まれた英三郎は、七歳で浅草の寺に預けられる。英三郎は市井の浪人として成長するが、思いがけない偶然の重なりから知らず知らずのうちに西条藩の御家騒動に巻き込まれるその中で英三郎は己の出自を知り、騒動を操る藤巻右京と大老・酒井雅楽頭に闘いを挑んでいく。戦時中に刊行され、戦後長く埋もれたままとなっていた大作。
               <文庫本カバーより>
50
与之助の花
  恋芙蓉
孤島
非常の剣
磔又七
武道宵節句
一代恋娘
奇縁無双
  春いくたび
与之助の花
万太郎船
噴上げる花
友のためではない
世間
 
341
  ふとした不始末からごろつき侍にゆすられる身となった与之助が、思いを寄せていた娘から身を引き、ごろつきを斬って切腹するまでの心の様を描いた表題作。わがままで武術自慢の藩主の娘を、一介の藩士が無遠慮にこらしめる「奇縁無双」。維新戦争に赴いた恋人の帰りを10年間も待つ女心を哀切に謳った「春いくたび」。ほかに「一代恋娘」「友のためではない」など全13編を収める。            <文庫本カバーより>
51
ならぬ堪忍
  白魚橋の仇討
新三郎母子
悪伝七
津山の鬼吹雪
浪人走馬灯
五十三右衛門
千本仕合
  宗近新八郎
米の武士道
湖畔の人々

ならぬ堪忍
鴉片のパイプ
 
361
  城代家老の御意討ち、を命じられた新八郎は、直に不正を糺すが、逆に率直な説明を受け、初めて真実を知る。世間の風聞などは信を置くに足らぬと説いた著者の人間観が現れる「宗近新八郎」。藩の家宝、が象徴する武家の権威を否定して“人間第一主義、を強調する「浪人走馬灯」。生命を賭けるに値する真の〝忍〟とは何かを問う「ならぬ堪忍」など戦前の短編全13作を収める。
               <文庫本カバーより>
52
明和絵暦
  明和絵暦
530
  尊王学者・山県大弍の影響をうけ、藩の進むべき道をめぐって対立を深める小幡藩の青年藩士たち。そして兄と許嫁とが敵味方に分かれることになった時、八千緒は……。大式と苦難をともにする若者たちをとおし生涯のテーマ〈人間の真価は何を為したかではなくて、何を為そうとしたかだ〉を追究。若き周五郎が娯楽小説作家としても第一級の腕前であることを証する二作目の新聞小説。            <文庫本カバーより>
53
怒らぬ慶之助
  小さいミケル
染血桜田門外
如林寺の嫁
茅寺由来
黒襟飾組の魔手
怒らぬ慶之助
長州陣夜話
猫眼レンズ事件
翼ある復讐鬼
  縛られる権八
千代紙行燈
武道絵手本
紀伊快男子
雪崩
挟箱・外二編
女ごころ
怒る新一郎
 
379
  二の矢を携えず、ただ一矢のみを持って真剣勝負に臨む侍の姿を通し、武士道の真髄を描いた表題作。従妹の許婚の悪行を知らされると同時に、従妹への恋情に目覚める「怒る新一郎」ほか「千代紙行燈」「武道絵手本」など。大正15年の「小さいミケル」から、昭和18年「日本婦道記」が直木賞に推されてこれを辞退した時期までの苦行時代を、新たに発掘された11編を含め跡づける短編集。            <文庫本カバーより>